サッカーの祭典として100年近い歴史を誇るワールドカップにおいて、複数国による共催は2002年の日韓大会以来2度目、そして3カ国にまたがる開催は大会史上初の試みです。ワールドカップ開催地の歴代一覧を振り返っても、かつては1つの国家が自国のインフラと威信を懸けて単独ホストを務めるのが通例でした。では、なぜFIFA(国際サッカー連盟)は北米3カ国による広域共催へと舵を切ったのでしょうか。
最大の要因は、大会規模が48カ国・104試合へ肥大化したことに伴う「開催コストの分散と既存インフラの活用」です。五輪をはじめとする巨大メガイベントでは、新設スタジアムの建設費高騰や大会後の維持管理が開催都市の財政を圧迫する「ホワイトエレファント(白象=無用の長物)」現象が深刻な国際問題となってきました。その点、アメリカにはNFL(米プロフットボールリーグ)の本拠地をはじめとする世界最高峰の超巨大スタジアム群が既に完成しており、莫大なハコモノ投資を必要としません。
さらに、FIFAが公表する中期事業計画からも明らかなように、世界最大のスポーツエンターテインメント市場である米国市場の本格開拓と、カナダ・メキシコを巻き込んだ北米自由貿易圏全体での巨額スポンサーシップ獲得が極めて重要な戦略軸となっています。単なるスポーツの祝祭を超え、商業的成功と持続可能な大会運営を両立させるための「極めて現実的な経済的選択」が、この3カ国共催というフォーマットでした。