新聞の全面広告を1ページ買い切るのに、どれほどの費用がかかるか。全国紙ともなれば数千万円単位の資金が一瞬で吹き飛ぶ。それを年に何十回、何百回と、何十年にもわたって繰り返している人物がいる。それが深見東州(本名・半田晴久)だ。
ヤマトタケルに扮して仁王立ちし、横には「怒濤の英語」「縄文人」といった謎のキャッチコピーが踊る。初めて目にした人間は例外なく困惑するだろう。「何かのギャグか?」「怪しい団体の罠ではないか?」と。しかし、広告に掲載されている問い合わせ先へ電話をかけても、怪しげな壺を売りつけられるわけではない。案内されるのは、彼が主宰する予備校「みすず学苑」の講習であったり、自著の出版記念イベントであったり、あるいは時計の展示販売会だったりする。
悪趣味とも受け取れる極彩色のビジュアル。だが、そこには冷徹な計算が透けて見える。電通や博報堂といった大手広告代理店が競い合って作る「綺麗で無難な広告」など、誰も覚えてはくれない。彼の手法は徹底した悪目立ちだ。人々の網膜にこびりつき、一度見たら二度と忘れられない認知の爪痕を残す。その戦略は見事に結実し、半世紀近くにわたり日本人の好奇心を刺激し続けている。