身近なところで「叢」の漢字に接する機会は、実は出版物や歴史用語の中に数多く存在する。代表格が、岩波文庫や各出版社が発行する「〇〇叢書」という名称だ。一定のテーマやジャンルに基づいて編纂された書籍群を指し、本好きにとってはなじみの深い言葉である。
また、文学的表現として愛される「叢雲(むらくも)」は、「月前に叢雲、花に風」ということわざでも知られる。良いことにはとかく邪魔が入りがちだという例えだが、この「叢雲」もまた、群がり集まる不穏な雲の立ち込め方を見事に写し取っている。普段意識せずに触れている熟語の中に、この漢字の美意識が今も息づいている。