劇場に入ってまず目を奪われるのは、コリコの町並みを抽象的かつ詩的に捉えた巨大な可動式セットだ。だが、観客を最も驚嘆させたのは「飛翔」のリアリティに他ならない。
従来のワイヤーアクションにありがちな身体の硬直感は、ここには一切存在しない。最先端のサスペンションシステムと身体表現の限界に挑んだパフォーマーの緻密な計算によって、キキが風の揺らぎを感じ、箒のバランスを取り直す細かな素振りまでもがステージ上で完璧に表現されている。まるで重力そのものが劇場の空間だけふっと軽くなったかのような錯覚。客席の上空を旋回するシーンでは、観客自身がキキとともに風を切っているかのような圧倒的な没入感に包まれる。