カオナシは本来、言葉を持たず、自らの顔や声すら持たない不気味な影のような存在だった。しかし、青蛙を飲み込んだ瞬間から、青蛙の声帯と欲望そのものを乗っ取り、油屋の従業員たちを金で釣って巨大化していく。
劇中でカオナシが発する「砂金をくれぇ!」「千を出せ!」という肥大化した要求の言葉は、すべて青蛙の声だ。カオナシという怪物に肉体と声を乗っ取られながらも、その声の主である青蛙自身の「金銭への執着」がカオナシの暴食を加速させたという見方は極めて興味深い。
精神分析的な観点からも、青蛙は「無意識の欲望」を解き放つトリガーとして機能している。金を見せつけられればプライドも捨てて平伏し、欲望の赴くままに手を伸ばす。その哀しくもリアルな姿は、資本主義社会に生きる人間の脆さを鏡のように映し出している。