彼を語る上で避けて通れないのが、視覚情報と聴覚情報の強烈な摩擦だ。公式ビジュアルに描かれるのは、ゆるいパーカーを羽織り、少し憂いを帯びた瞳で見つめるキュートな女の子のキャラクター。だが、ひとたびトラックが鳴り響けば、そこから吐き出されるのは鋭利でスキルフルな日本語ラップである。早口のライム、抜けの良い発音、フロウの緩急。どれをとっても日本有数の実力派ラッパーのそれだ。
このギャップに撃ち抜かれたリスナーが、直感的に「どんな人間が歌っているのか」と探したくなるのは自明の理だろう。記号化された美少女アイコンの背後に、確実に存在する「骨太な肉体」。その違和感こそが、彼が意図して仕掛けた最初にして最大のエンターテインメントだったのかもしれない。