首里そばの歴史を語る上で外せないのが、伝説の名店と呼ばれた「さくら屋」の存在だ。店主の真壁イツ氏が作り上げた伝統の沖縄そばは、当時の地元住民や文化人たちに深く愛されていた。その味に感銘を受け、技術と志を受け継いだ現店主によって1993年に創業されたのが現在の店舗である。
効率化や大量生産が優先されがちな現代において、あえて手仕事の工程を守り続ける決断は容易ではない。硬質で噛み応えのある独特の手打ち麺は、粉の捏ね加減から熟成、切り分けに至るまで、長年の勘と手先の感覚だけが頼りだ。この妥協なき職人魂こそが、一杯の丼の中に凝縮された深い味わいの根源となっている。