七夕の物語は東アジア全体に広がっているが、国ごとに受け止め方やニュアンスが微妙に異なる点が実に興味深い。韓国では「チルソク(七夕)」と呼ばれ、この日に降る雨はふたりが嬉し涙を流している証拠、あるいは逢瀬を終えた翌朝の別れの涙だと解釈される。そして、韓国の民間伝承でもカササギとカラスが協力して橋を架ける役目を担う。
中国の「七夕節(チーシー)」では、バレンタインデーのようなロマンチックなイベントとして若者たちに定着しているが、地方の古い民謡には「カササギが橋を架け忘れると川を渡れない」といった切実な歌詞が残る。一方の日本においては、平安時代の歌人・大伴家持が百人一首で「かささぎの 渡せる橋に おく霜の…」と詠んだように、朝廷の御殿の階段や夜空の天の川を重ね合わせる文学的・美学的な象徴へと昇華していった。