喜多方の朝は早い。まだ街全体が朝靄に包まれている午前6時前、静まり返った住宅街の中にそこだけ異彩を放つ場所がある。発券機の前に並ぶ人々だ。防寒具を着込んだ旅行者、地元の常連客、カメラを抱えた海外からのトラベラー。目的はただ一つ。「喜一」の暖簾をくぐること。
かつて地元の製麺所や工場で働く人々への労いとして始まった喜多方の朝ラー文化。今やその文脈は大きく変化した。ファストフード的な素朴さを越え、最高峰のガストロノミー(美食)体験として再定義されたのだ。午前9時を待たずに「本日完売」の看板が出されることも珍しくない。限定感を煽るわけではなく、店主が納得のいくスープの仕込み量だけを丁寧に仕込み、提供し続けている結果に過ぎない。