生栗にいきなり刃物を当ててはならない。現代の厨房で常識となったのは、徹底した事前吸水と熱ショックの組み合わせだ。乾燥して木化した鬼皮に水分を吸わせ、組織を軟化させることからすべてが始まる。
一晩たっぷりの水に浸した栗を、70度から80度前後の湯に15分ほど浸漬する。沸騰させてはならない。内部のデンプンが糊化を始める前に、外側のセルロースだけを蒸気で浮き上がらせるイメージだ。底の座(ざ)と呼ばれる平らな部分からナイフの刃を引っ掛け、頭頂部に向かってめくるように引くと、驚くほど手応えなく鬼皮だけが帯状に剥がれていく。指先で「手繰り寄せる」感覚がつかめれば、渋皮に刃が触れるリスクはゼロに近づく。