大歓声が渦巻く甲子園球場には、特有の「魔物」が住むと言われる。一度雰囲気が相手に傾けば、どんな強豪校であっても足元をすくわれる空間だ。しかし、市立福山ナインはその魔物すらも味方につけた。
ピンチの場面でもマウンド上に集まったナインの表情に焦りはなかった。互いに声を掛け合い、笑顔さえ見せる度胸。スタンドからの応援が地鳴りのように響く中、セカンドを守る主将が放ったダイビングキャッチは、大会屈指のファインプレーとしてメディアに大きく取り上げられた。「緊張を楽しむ」という意識改革が、極限状態での最高のパフォーマンスを引き出した瞬間だった。