エスクリバで出されるパエリアのテーブルには、金属のフォークではなく「木のスプーン」が添えられる。これこそが創業者ジョアン・エスクリバ氏の強いこだわりだ。金属特有の味覚への干渉を排除し、鍋の底に薄く焼き付いた香ばしいおこげ(本国では「ソカル」と呼ばれる)を傷つけずにすくい取るためである。
看板メニューである「エスクリバ パエリア」を口に運んだ瞬間、サフランの気品ある香りとエビやイカ、貝類から溢れ出た濃厚なエキスが弾ける。薄く敷かれた米は噛むほどに味わいが深まり、木のスプーンが口に触れる温かなタッチが料理の素朴で温かい魅力を一段と引き立てている。