不吉な日として日本で真っ先に思い浮かぶのは「仏滅」ですが、欧米における13日の金曜日への忌避感情は、日本の仏滅に対する感覚とは次元が異なります。
医学・心理学の領域では、13という数字を極端に恐れる症状を「トリスカイデカフォビア(13恐怖症)」、13日の金曜日を病的に恐れる症状を「パラスケヴィデカトリアフォビア」と命名しています。米国ストレス研究所(The Stress Management Center and Phobia Institute)の試算データによると、米国では人口の数パーセントにあたる数百万人がこの恐怖症を自覚しており、13日の金曜日には「商談を行わない」「飛行機に乗らない」「家から一歩も出ない」といった極端な行動を取るケースが報告されています。
欧米の日常風景にもその影響は色濃く残っています。
- 高層ビルやホテル:エレベーターの階数表示で「12階」の次が「14階」になっており、13階が意図的にスキップされている事例が多数存在。
- 航空会社:ルフトハンザ航空やエールフランス航空などの一部機材では、座席番号の「13列目」が存在しないレイアウトを採用。
- 病院の手術室:「第13手術室」をあえて設置せず、12A号室やスキップ処理を施す医療機関が実在。
一方で、世界中すべての地域で「13日の金曜日」が恐れられているわけではないという点も重要です。例えばイタリアでは「17日の金曜日」が最も不吉とされます(ローマ数字のXVIIのアナグラムがラテン語のVIXI=『私は生きた=私は死んだ』を意味するため)。また、スペイン語圏やギリシャでは「13日の火曜日」が不吉の象徴とされており、火曜日(Martes)が戦と破壊の神マルス(Mars)に由来することに起因しています。不吉の基準そのものが、地域固有の言語や宗教観によって恣意的に作られた産物に過ぎないことがよくわかります。